人事労務のリスクを回避するため、就業規則を見直そう!
個別労働紛争の増大に伴い、就業規則の役割がますます重要になってきました。しかし、人事労務のリスクは就業規則だけでは回避できません。人事労務の場面ごとに作成する人事労務管理帳票の活用が必要なのです。
労働基準法等で義務付けられていることと就業規則の全体構成を記してみました。
[1]採用から定年退職まで
[2]労働時間等
[3]休暇等
[4]職場環境
[5]賃金
1. 個別労働紛争の○割が採用(入社)・退職(退社)にからむ問題なのです。
(1)採用時の注意点は何ですか?
- 「雇用契約書」をきちんと交わしていますか?
正社員・契約社員・パートタイマー・嘱託社員等個別に労働条件が異なれば、それぞれ誤解のないように雇用契約書を交わしましょう。
雇用形態別に各種の「雇用契約書」を、当事務所では準備しています。 - 「健康告知書」をもらう
内臓疾患・精神疾患を起因とする傷病の場合、業務内・外の認定で争いになるケースが発生します。
業務上・外の認定は会社運営上大きな影響を与えますので、入社時に過去の病歴並びに現在の健康状態を告知してもらいましょう。 - 業種・職種によっては「運転告知書」をもらう
- 「身元保証書」「誓約書」をもらう
(2)退職時の注意点
- 退職事由・解雇事由はきめ細かく規定していますか?失業給付に日数が「退職事由」により大きく異なりますので、「退職事由」でもめるケースが多いのです。
- 退職事由でもめないために、「退職届」をもらう。
- 解雇の場合は「解雇予告」を行なう。
- 本人の非違行為等を理由とする解雇の場合、「始末書」の有無はきわめて重要です。従業員に対する指導の経過を書面で残しましょう。
始末書には、「良い始末書」「悪い始末書」があります。当事務所では、始末書も事由別に様式を準備しました。 - 退職金は規程通り支払おう。
2. 過労死の増加と時間外労働規制の強化
過労死問題を契機にして、労働基準監督署による時間外労働時間の規制も強化されました。- 36協定(時間外労働・休日労働協定)の締結・届け出や届け出内容の遵守状況が特に経営側に求められています。
- 認められる時間外労働時間の範囲は、目安時間として1ヵ月45時間、年間360時間となっています。
- どうしても限度時間を上回る時間外労働が必要な場合は、「特例事項」付き36協定を結ぶ必要があります。
3. 職場規律・秩序(職制)を確立するために服務規定を充実しよう
従業員が守らなければならない就業上の規律と職場秩序について、具体的に定め明文化した規範が職場には必要です。具体的には、出退勤、服務規律、指揮命令、誠実勤務、守秘義務、施設管理、秩序維持、信用保持、競業禁止、能率の維持向上、その他協力関係、その他内部コンプライアンスに関する事項、セクハラ対応など、かなりの項目を検討する必要があります。
4. 変形労働時間制を採用しよう
1週40時間労働制をクリアーするためには、変形労働時間制度を導入することが不可欠です。1年単位の変形労働時間制、1ヶ月単位の変形労働時間制など、就業規則に明記することやや労使協定を必ず結んで従業員に周知すると共に、労働基準監督署への届け出も着実に実施しましょう。
5. 別規程も定めよう
パートタイマー、嘱託社員、契約社員など正社員とは待遇も身分も異なる場合は、別規程を作成する必要があります。また、育児休業・介護休業・慶弔見舞金・旅費規程など関連規程も整備しなければなりません。